わたしがはっきりと、あれが初恋だったろうといえるのは、中学生のときです。
クラスの人気者だったけれど、真面目で器用貧乏なところのあるその人は、わたしと一緒に掃除当番を押し付けられていました。
わたしとその人が話せるのは掃除の時間だけだったので、わたしは毎日ゴミ箱を持っていって、掃除場所にその人が来るのを、息を潜めて待っていました。
卒業式のとき、お願いして交換してもらったセーラー服のタイを、どこかに大事にしまっていたのだけど、大事にしすぎてどこにしまったのか忘れてしまいました。
大人になって、自分の感情にあれやこれやと名前をつけられるようになったけれど、独占欲や性欲や憧れや慕わしさがないまぜになった未分化の感情を、今でも大切にとっておいてあるのです。
変にラベルを貼らないで、そのままにしておいた方がいい感情もあるのでしょうね、大人にはそれが難しいけれど。